ミシシッピ川以東のルイジアナ

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型推栄Pのシャニアニネタバレ感想:または我々はいかにしてシャニアニを評価すべきか

はじめに

本記事はアニメ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(以下『シャニアニ』)劇場先行上映第1章〜第3章の視聴レビューです。したがって、シャニアニ第1〜12話の内容に関するネタバレを含みます。

またこの記事には、シャニアニに対するネガティブな感想が含まれます。

筆者について

型推栄かたすいろんです。 ちょうど去年の1月にシャニマスをはじめたプロデューサー1年生です。最近はミリアニにお熱ですが、ゲームはシャニマスをメインでプレイしています。とはいえそんなに熱心にやる方ではなく、とりあえず手元で読めそうなコミュを読むのが主目的、あとはたまに思い出したかのようにTrueEnd埋めするくらいの温度感です。

注意点

ということで1stLIVEはじめ過去のライブのネタは全く拾えませんし、劇中で引用されているが持っていないので読めていないコミュはごまんとあるものと思われます。 また当然ながら僕は作劇やアニメーション制作、3Dモデリングについても素人であり、これらについて専門的観点からコメントしているわけではありません。 つまりネット上のほとんどの言説と同じように、これっぽっちの信頼も置かずに読むよう注意願います。

本評では何度もアニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』(以下『ミリアニ』)を取り上げて比較しますが、これについては賛否両論あるようです。アイドルマスターという同一IPから同時期に公開されたコンテンツであり、劇場で先行上映された3Dアニメという共通点からも、僕はミリアニとシャニアニとは比較されて当然だと考えています(前者の意味ではU149とも比較すべきでしょうが割愛します)。

感想

以下、思いついた順。1章や2章は詳しい部分についてあまり覚えていないので、細かい演出等については3章の話が主になる。

オフィスカジュアルタイツはづきさん

バンナムはSpread the Wings!!(七草はづきver.)を発売すべきだし、高山Pは普段の事務員服じゃないけどちょっとフォーマルな服装のはづきさんを押し出してほしい。

もっと曲を流してほしかった...

とにかくこれに尽きる。シャニマスとはいえアイマスのアニメなのだから、楽曲出してナンボだろと思う。

ストレイライト以降が出なさそうということであまり最近の曲は来ないだろうとは思ったが、まさかBRILLI@NT WING分だけとは...

絶対にイルミネが3人で星空の下に座って話しながら『トライアングル』が流れるシーンが来るだろうと勝手に思ってたし、ガン泣きする準備もしていた。三峰のてやーん!で笑う腹づもりもあった。それがちょっと残念だ。

誰に焦点を当てるか

アイマスの常だが、物語はいわゆる「信号機トリオ」を軸に展開される。ミリアニであれば未来を中心に原っぱライブやシアター柿落し公演の話が進む中、静香と父の関係、翼の”本気”の問題にも焦点が当たる。

シャニアニも勿論イルミネが話の中心にはいるのだが、その中でも主役が真乃に固定されている。灯織やめぐるをメインとしたトピックは限定的で(初期灯織の狂犬ムーブなどはあるが)、あくまで真乃目線で彼女に寄り添う二人が描写されているに過ぎない。彼女たちについてももう少し描写があってもよいと思った。その割には、真乃についても深堀りされているかというと疑問が残る。

その上、シャニアニには4つのユニットをなるべく均等に描写しようという意図があった。構成上イルミネとアンティーカの割合が大きくはなるのだが、ライブの楽屋や全体練習のように全員がいるような場面では、アルストと放クラもほとんど同等の時間を割いてやり取りが描かれていたように思う。その均等さはミリアニと比べるべくもない*1

結果としてシャニアニはどのユニットにも十分な焦点が当てられておらず、第3幕の全体ライブは特に顕著だった。WING敗退後の描写はよかったので、単純に1ユニットを最低限描くのに必要な時間的オーバーヘッドが大きいのだろうか。つまり、中途半端に会話を挿入しても食う時間に見合うだけの深堀りができないのである。一部のユニットは曲披露だけにして、その分イルミネの込み入った会話をもっと入れてよかったのではないだろうか。

話の抑揚がない

極論、物語は

  1. 何かをしたいという目標がある
  2. 問題が発生する
  3. 問題を解決する
  4. 目標が達成される

というサイクルではないかと思う。これが合理的に、かつ継続的に繰り返されることで、納得感を維持しつつ受容者の感動に揺さぶりをかけることができる。

例えば

  1. アイドルになりたい
  2. オーディションに合格しなければならない
  3. 2人で練習する、本番で背中を押してもらう
  4. アイドルになれた

とか

  1. ライブをしたい
  2. 場所がない、同意が得られない、ステージがない、練習が足りない
  3. 原っぱでやる、みんなで話し合って同意を形成、手縫いでテントを作る、シアターで合宿する
  4. 原っぱライブができた

というふうに。ここで発生する問題解決の過程が感動の波であり、問題が大きいほど振幅が大きく、頻度が高いほど周期が短くなる。あまり大きな波が頻繁に起こっても疲れるので、ここはバランスであろう。

シャニアニはとにかく話に高低差がない。少なくとも、”分かりやすい見せ場”は存在しない。

シャニアニは1〜4話(劇場第1章)でそれぞれ1話ずつ使って各ユニットの紹介、5話以降(劇場第2章、第3章)はWINGおよび全体ライブへ向けた活動が主軸となる。

上記の意味では、第1章は分かりやすい展開が多かった。満足のいくMVを作るために奮闘するアンティーカとか*2、ヒーロー不在のヒーローショーを盛り上げようとする放クラとか。

第2章以降のWINGと283プロライブについては、真乃の視点から目の前の課題を解決することに重点が置かれる。これらが視聴者にとってなぜ十分な大きさの波でなかったかについては直後に述べる。

事件

アニマスで言えば、仲間の離散による春香の動揺。週刊誌により浮き彫りになった千早と家族の問題。竜宮小町に関する美希とPのすれ違い。登場人物について我々が深く知るには彼らの心情や状況、関係性を大きく突き動かすようなイレギュラーが必要とされ、そのための舞台装置として何らかの事件が起こる(ここでいう「事件」とは、後述の意外性を包含した言葉である)。

先述の真乃の深堀りにせよ、話の抑揚にせよ、シャニアニには事件が起こらない。

意外性

先述の通り、物語上の出来事には前後の整合が要求される。Aという出来事の後に描かれるBが、Aの元では起こりえないようでは当然矛盾を生じる。あるいは矛盾しなかったとしても、あまりにも脈絡がないようでは困る。

一方で受容者を満足させるためには、意外性がなければならない。必然でないと言ってもよい。アニマスの終盤で765プロがみんな売れるようになって、もし春香がそれに順応して何事も起こらないままライブが成功したら、そこに至るまでの数話は全くの無駄である。ここで春香が曇り、Pがケガをするという必然でない事件が起こり、最終的にそれらが解決されるカタルシスによってこそ、視聴者の感動は揺さぶられるのである。

シャニアニで、真乃の身に事件があっただろうか。スカウトとかセンターへの抜擢とかライブ前の特訓とか、そういうイベントは確かに定期的に発生するし、その度に真乃の心理は丁寧に描かれる。しかし視聴者にとって、それは彼女がアイドル活動をする上で当然に想定できる試練であり(悪い意味で期待を裏切らない)、既定路線をなぞるだけ、あるいは何も起こっていないのと同じなのである。

ただまあアニマスは2期あったし、ミリアニは全員をまんべんなく描いたわけではない。そこは考慮する必要がある。

シャニマスの方向性

そもそも、シャニマスは特異な属性を持つアイドルの物語ではない。昆布巻きのサンタクロースもわるいオタク(Lv.255)もいないし、みんながみんな特筆するような理由わけがあってアイドルしているわけでもない。

(エビさんとかダンベ君主論とか財布なかったりとか、そういう素っ頓狂さは持ちつつ)普通の女の子であるところのアイドルを、等身大で描くのがシャニマスというコンテンツであったはずであり、我々はこれに異存ない。これはサスペンスやスペクタクルの目線ではそこまで面白みがないかもしれないが、彼女たちの日常の出来事や、そこで起こる細やかな心の機敏をわずか垣間見ることに喜びを感じるのである。

このような表現は、受容者が能動的に消費できるような状況、まさしくシャニマスのようなノベル形式では全く問題ない。一方でアニメのように受動的に消費せざるをえない媒体では、受容者が今までに述べたような「楽しみやすさ」を求めるのも必然であろうと思われる。

霧子のガーゼ

本当によかった。僕はガーゼになりたい。

3Dモデル

シャニアニとミリアニはどちらも3DCGを用いて作画されたアニメだが、人物造形の方向性が異なる。元来のアニメ的表現に寄せたミリアニに比べると、シャニアニは美麗さに重きを置いている。

ミリアニのコミカルでキュートな未来ちゃに比べると、本作の真乃はかわいいより「美人」という表現の方が当てはまる。特に咲耶とかすごかった。それ自体は悪くないと思うし、シャニマスの雰囲気にも合っていると感じた。ただ後述のように、動画演出の面でこの路線は悪手だったように思う。

動きとフレーム

正直、シャニアニのカクカクした動きが鼻についた読者は少なくないだろう。少なくとも、僕は視聴しながら事ある度に気になって仕方がなかった。一方でミリアニはそこまで気にならない。

もちろん第一の要因は映像技術であろう。フレーム以外にも思うところがなかったわけではないが、これについてはまったくズブの素人なので、語らないこととする。

第二に、シャニアニは物語だけでなく、映像としても動きが小さかったという点を挙げたい。ミリアニで画面中を四方八方動き回っていた茜ちゃんの姿は印象的だが、ミリアニではよりアニメ的な、動作と始点と終点の時間が長く、間のコマを落とすようなキビキビした表現が多く使われている。

シャニアニの美麗なモデルに、そのようなコミカルな動きをさせるのはあまり合わない。結果として動作をゆっくりさせることになるのだが、これによりカクカクさがより目立って、動きがもっさりして感じられたのではないだろうか。 実際、動きの激しいライブシーンではそこまで違和感を感じなかった。

汗の表現

汗で張り付いた髪の表現に対するこだわりは一体何なんだ。制作陣にそういう性癖の人がいるのでは?

第3章合宿シーンの果穂

目がしいたけになった果穂からしか摂取できない栄養素は存在します。

Pの「話したいこと」

プロデューサーから全体ライブでセンターをしてほしいという頼みを受けている真乃は、(確か)9話でプロデューサーに「話したいことがある」と事務所に呼び出される。そこで真乃は依頼を承諾する旨をプロデューサーに伝える。

その後すぐに場面転換があってライブ直前くらいまで時間が飛ぶのだが、結局プロデューサーが真乃に話したかったこととは何だったのだろうか。本当にこれが上映中気になって仕方なかった。

2期

3章のほんへ後にはストレイライトとノクチルの7人が映っているシーンが挿入され、そして "TO THE NEXT STAGE" の文字。もちろん2期の匂わせである*3

我々は2期に期待すべきなのだろうか。1期と同じ様子で続くのなら正直つらいものがある。ただストレイもノクチルも盛り上がるコミュには事欠かない*4ので、大丈夫な気もする。

宣材資料

アニメの内容とは全く関係ないのだが、劇場第1章の入場者特典は283プロ宣材資料だった。

283プロの封筒から樹里ちゃんが顔を見せた瞬間、初めて回したガチャで出てきた初SSRの「【I・OWE・U】西城樹里」を、初めてのWING優勝を思い出して泣いた。シャニアニで最高の体験だったと言っても過言ではない。

結論

最高のアイドル、西城樹里ちゃんをよろしくお願いいたします。

𝑩𝑰𝑮 𝑳𝑶𝑽𝑬...

*1:勿論39人のミリオンと16人のシャニマスでは人数からして違うのだが。

*2:わかるな?

*3:シーズ以降を出そうとしたら七草家や社長、ルカについて突っ込まなければならず、劇場版が1本できるし七草弁護士銀幕デビュー不可避であろうから仕方ない。

*4:天塵を地上波で放送してほしい。放送されるまで死ねない。